口腔機能低下症・口腔機能発達不全症

口腔機能低下症
口腔機能低下症とは、年齢と共に、お口の感覚や噛む(咀嚼)、飲み込む(嚥下)、唾液の出る量などの機能が衰えていく状態を指します。お口の働きは、生涯を通して食事や会話を楽しみ、快適な毎日を送る上で不可欠な要素です。
当院では、舌の力の検査や咀嚼能力の測定を実施し、現状を数値で示して症状緩和に向けた治療を進めております。また、測定データは当院で保管しているため、患者様が定期健診でご自身の状態を正しく把握し、自宅でのセルフケアに取り組む意欲を高めることにも繋がります。
65歳以上の患者様につきましては保険適用となりますので、早期からの状態把握と管理が大変重要です。
こんな症状はありませんか?
- 口の中が乾くようになった
- 食べこぼしをするようになった
- 滑舌が悪くなった
- 食べ物が口に残るようになった
- 硬いものが食べにくくなった
- 食事の時間が長くなった
口腔機能の低下「オーラルフレイル」

健康な状態から要介護状態へ移行する途上には、筋力や活動性が低下する「フレイル」という中間期があり、その前段階である「前フレイル」期に、お口の衰えであるオーラルフレイルのサインが現れます。
患者様がフレイル状態や要介護状態へ進行することなく、いつまでも健やかで自立した暮らしを送るためには、このオーラルフレイルの兆候を見逃さずに捉え、当院での定期健診などを活用しながら、むし歯や歯周病予防を含む口腔ケアに積極的に取り組むことが、非常に重要であるということが明らかになってきています。
口腔機能と老化の関係

お口の機能は「食べること」(噛む、すりつぶす、飲み込む、味わう)や「話すこと」(発音、会話、歌う)だけでなく、表情による「感情表現」や「呼吸」など、幅広い活動に関わります。
高齢になり噛む力が弱まると、食べ物が喉に詰まるリスクが高まります。また、飲み込む力が衰えると、食事中にむせやすくなります。口内の清掃や歯を守る働きがある唾液の量が減ることで、むし歯や歯周病の進行、口臭といった問題に繋がりやすくなります。
このような患者様のお口の機能が低下することは、図に示されるような負の連鎖に陥りやすい状況を生むと考えられます。
オーラルフレイルは、こうした口腔機能のわずかな衰退の兆しを指し、筋肉や心身の機能低下であるフレイルの初期段階であり、老化のサインでもあるとされています。
当院で行っている検査
舌圧検査機器
これは舌の運動能力を計測する機器で、当院の定期健診でも活用しております。
患者様ご自身の飲み込む力が現在どの程度あるのか、またその機能に衰えが見られるかを、客観的な数値として正確に確認していただくことが可能です。さらに、測定データを記録・管理することで、お口の機能の老化度や、患者様ご自身の年齢と比較した状態を継続的に把握するのに役立ちます。
咀嚼能力検査機器
測定用グミ(グルコラムなど)を20秒間噛んでいただくことで、患者様の咀嚼能力を数値として測る装置です。
検査結果が数値で評価されるため、患者様ご自身も口腔機能の改善に向けた取り組みによって、どれだけ効果が出ているかを分かりやすく確認できます。当院の定期健診でもこの検査を行っております。
治療について

患者様にむし歯や歯周病が発見された際には、まずその治療によって口腔衛生状態の改善を目指します。それに加えて、口腔機能が低下した原因や、患者様の現在の状況に適した機能回復訓練(リハビリテーション)を当院で開始させていただきます。
具体的な訓練内容としては、舌や唇の可動域を広げる運動、咀嚼力の向上練習、唾液腺マッサージによる分泌促進など、様々なメニューを患者様に合わせて実施いたします。定期健診の際に、患者様の進捗状況を確認させていただきます。
口腔機能低下症に関する
よくある質問
治療期間はどれぐらいかかりますか?
口腔機能低下症の治療に要する期間は、患者様一人ひとりの病状や症状の進み方により様々です。一般的には、数ヶ月から半年ほど、継続的なリハビリや治療が必要となることが多く見られます。治療は段階的に実施され、当院での定期検診での評価結果などを踏まえ、患者様の状態変化に合わせて治療内容が見直されます。患者様固有の状況に沿った治療計画を策定するため、具体的な治療期間の見込みについては当院の歯科医師と十分に話し合いながら進めていくことが重要です。
予防するために日常生活で気を付けることは?
口腔機能低下症を予防するには、患者様ご自身の普段の暮らしで幾つかの点に配慮いただくことが肝要です。
一つ目は、栄養バランス良く食事を摂り、一口ごとに意識してよく噛んで食べることです。
二つ目は、口腔周囲の筋肉を維持するために、定期的なお口の清掃に加え、舌や口唇のトレーニングを実施することも推奨されます。
三つ目は、適切な水分摂取を心掛け、お口の乾燥状態を防ぐことです。
口腔機能低下症は治りますか?
口腔機能低下症は、適切なケアとリハビリテーションにより改善が見込めます。その効果には個人差があり、症状の進行度によっても異なります。早期に適切な対応を行うことで、日常生活に必要な口腔の働きを取り戻せる可能性があります。しかし、一度失われた機能を完全に元に戻すことは難しい場合もあります。このため、早い段階での診断とケア開始が極めて重要となります。

口腔機能発達不全症
歯並びや噛み合わせが悪化する要因は、遺伝的な問題だけではなく、日常の習慣や無意識の癖も強く影響を及ぼします。
当院では、口腔筋機能療法(MFT)というトレーニングを取り入れ、そうした生活習慣や癖などに起因する歯並びや噛み合わせの問題発生リスクを低減させています。
お子様にこんな症状は
ありませんか?
- 歯並びが悪い
- 固い食べものが嫌い
- 食べるのが早い(ほとんど噛まない)
- 食べるのが遅い(なかなか飲み込まない)
- 肥満または痩せがある
- ポカンと口を開けていることが多い
- 目が垂れて口がへの字、顔に締まりがない
- 話す時や食べる時にいつも口から舌が出る
- よだれが気になる
- 口から食べ物がよくこぼれる
- 口呼吸がある・いびきがある
- 滑舌が良くない
口腔機能発達不全症による悪影響
歯並びがより悪くなる
顎の骨は、お口周囲の筋肉の働きや咀嚼する際に加わる力によって発達します。口腔機能発達不全症があると、顎の成長が阻害されて小さくなり、それが原因で歯並びの乱れに繋がります。
呼吸がしづらくなる
顎の発育が不十分だと、空気の通り道である鼻腔や気道が狭まり、呼吸がしづらくなります。
姿勢が悪くなる
鼻腔や気道が狭くなると、それを補うために、頭を前に突き出した猫背の姿勢となり口呼吸をする傾向が見られます。この状態が定着してしまうと、顎には後ろに引っ張られる力が加わり、さらに成長不足を招く結果となります。
顔が長くなる
顎の骨格は、顔貌の形状に大きく影響を与えます。顎の発育が不十分な場合、顔は前後の奥行きが狭まり、上下方向に長い顔立ちになりやすいです。
口腔筋機能療法「MFT」

口腔筋機能療法「MFT」(Oral Myofunctional Therapy)とは、食事(咀嚼)や飲み込み(嚥下)、発音、呼吸といった際の舌や口唇の適切な動きや位置の獲得を目指す様々な訓練法です。MFTを継続的に実践することにより、口の周りの筋肉バランスが整い、誤った癖の改善が期待できます。特に、指しゃぶりと舌癖に対しては、MFTによる症状の改善が効果的であると考えられています。
当院では、矯正治療が円滑に進むように、そして治療後に歯並びが元に戻るのを防ぐ目的で、MFTを積極的に導入しています。MFTは方法を一度覚えれば、例えばテレビを見ながらでも行えるほど簡単なものです。このトレーニングを習得し、日々の習慣として続けましょう。
主なトレーニング方法

あいうべ体操
口を大きく「あー」「いー」「うー」「べー(舌を出す)」と動かします。大きく、ゆっくり動かすと効果的です。

ポッピング
ポッピングとは、トレーニングの最終段階で目指す「安静時に常に舌が上顎に触れている状態」や、「舌を持ち上げて食べ物などをのどへ送り込む」動作に必要な基本的な筋力を養うための練習です。舌全体を上顎に吸いつけ、ゆっくり口を開けながら舌小帯(ぜつしょうたい)を伸ばし、「ポン」と音を鳴らします。
口腔機能発達不全・MFTに
関するよくある質問
「お口の筋肉」とはなんですか?
口の周りには、食べたり、飲みこんだり、話す際に使われる筋肉群があります。これらは唇、舌、頬の筋肉のほか、咬む筋肉やのどの筋肉などです。これらの筋肉は、これらの口腔機能を行う時に活動します。
MFTを行うと、歯並びは綺麗になりますか?
効果には個人差がありますが、矯正装置を使用せずに歯並びの状態が改善されるケースも存在します。口腔周囲筋の働きが正しくなるにつれて、歯並びが整ってくる様子がしばしば観察されます。
しかし、歯並びが悪くなる原因は筋肉の機能だけではないため、トレーニングを始める前には詳しい検査が不可欠です。その検査結果によっては、矯正治療とトレーニングを組み合わせて行うこともあります。